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中国芸能


中国で活躍する日本人俳優 矢野浩二 人気の秘密

8,074 2010.01.29 11:12

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矢野浩二

段非平=聞き手 金色池塘=写真提供

「日本鬼子」は旧日本軍の軍人を指して使われていた蔑称であるが、一人の日本人俳優の活躍で、近年、テレビドラマに登場するその「日本鬼子」に、中国の若い女性たちが黄色い声をあげている。8年前、無名だった脇役俳優の矢野浩二は、単身、中国のテレビ界に飛び込んだ。彼の演じた日本の軍人はそれまでの悪いだけのステレオタイプのイメージを一掃し、役柄に人間らしさを与えた。リアルで生き生きとした日本の軍人のイメージが、少なからぬ視聴者に認識され、好感をもたれるまでになった。

矢野浩二がこの成功をつかむまでの道は必ずしも順風満帆というわけではない。独り異国にやって来て、最初はコミュニケーションもおぼつかず、演じられる役もなく、安定した仕事も収入もなかった。さらに、日本の軍人を演じたことで大きなストレスも背負わなくてはならなかった。しかし、矢野浩二はあきらめなかった。実力と根気で、中国で新境地を切り開いたのである。

また、彼の存在そのものも、中国のテレビ界に新たな風を吹き込む存在となった。矢野浩二の中国におけるさまざまな経験から、中国のテレビドラマのこの数年の変化を読み取ることもできる。

「従来没看過那麼帥的日本鬼子

(こんな素敵な悪役は初めて)!」(20代、中国人女性)

――2000年、ドラマ『永遠の恋人(原題は「永恒的恋人」)』に出演したのが中国における最初のドラマ出演ということですが、その仕事を引き受けたときのお気持ちはいかがでしたか。

1992年から日本の芸能界で仕事をするようになり、8年ほど俳優(森田健作・現千葉県知事)の付き人をしながら、脇役を演じていました。必死に努力を続けていましたが、なかなか実績はついてきません。だから、変化がほしかったのです。新しいもの、日本にはないものを吸収したい、海外で飛躍したいという思いがありました。そんなとき、当時所属していた事務所からこのドラマの仕事の話をもらいました。最初、若干の不安は感じました。中国を訪れたことが一度もなかったからです。けれど、それ以上に高ぶる気持ちがありました。海外で演じることができる、望みがかなう、と思ったのです。

――その撮影が終わってから、北京を拠点に活動することを決心したそうですが。

撮影現場で新鮮なものを感じ、役者として、自分の居場所を見つけた気がしました。北京で活動するということは未知の世界ではありましたが、確かなものがないからこそ、可能性があると考えて、将来の発展に期待を抱くことができたのです。中国のドラマの出演に中国語は不可欠ですから、北京で生活するのが、中国語を身につけるための理想的な環境だということもありました。

――北京で生活を始めたばかりのころは、出演のオファーもなく、異国でたった一人の生活で、諦めようと思ったことはありませんでしたか。あなたを支えてきたものは何でしたか。

諦めようと思ったこともあります。けれど諦めるのはとても簡単なことです。今日でも明日でも、いつでも諦めることはできます。何事も続けることが一番大切です。私は難易度の高い仕事を選ぶのが好きで、難しければ難しいほどやってみたくなり、挑戦したくなります。努力すれば必ず得るものがあると信じています。

『永遠の恋人』の撮影で親しくなったスタッフを頼り、新境地を求めて北京にやってきたものの、声がかかる仕事といえば抗日ドラマの悪役、日本人の軍人役ばかり。描かれる日本人像に、日本人としての葛藤を抱えながらも、果敢に挑んでいく。

――戦争を題材にしたドラマで多くの日本の軍人のイメージをつくってきたことで、日本国内の世論からのプレッシャーもあったようですが。

いろいろ取り沙汰されたことをまったく気にしていないわけではありません。ですが、過去の歴史には人それぞれの見解があると思っています。私の演じた役に反発する人の気持ちも、よく理解できますし、それも当然のことと思います。一人の役者として何よりも大切なことは、いかなる役でも「演じる」ということです。私は気持ちを集中させ、全力を尽くしてその役を演じるだけです。それ以外のことはあまり考えたくありません。ドラマの視聴者に認めてもらえることが価値のあることだと思っていますから。たくさんの人が私のことを応援してくれているので、私はそんな人々に感謝し、今後も一生懸命に演じ続けることで応えたいのです。

2000年から今までの8、9年間で、人の考え方もとても大きく変化しています。中国は「さまざまな可能性を秘めた国」です。中国で活動を続けるのは刺激もありますし、不可能を可能にするという文化的な希望のある国だと感じているからです。

そんな矢野浩二の姿に、中国の視聴者の注目が集まるようになる。特に若い女性たちを中心に、これまでの日本人軍人役とは一味違った人間味のある姿に、生身の役者の真摯な心を感じ、整った顔立ちの日本人俳優矢野のファンが増えた。監督や脚本家は彼を使いたいがために、戦争で悩み傷つく日本人役を次々に登場させるようになった。矢野の存在によって、中国の歴史ドラマにこれまでにない日本人像が登場するようになり、中国における「悪い日本軍人」のイメージが変化しつつある。しだいに矢野に、抗日ドラマ以外のオファーも来るようになった。

――現在は演技の幅もますます広がり、多彩な役を演じられています。東北地方のコメディードラマ『天天好生活』では、中国人の整形外科医を演じたとか。初めてのコメディー出演、中国人役ですね。

ええ。さまざまな異なる役を演じられることはとても嬉しいです。視聴者に別の矢野浩二を見てもらい、別の顔も知ってもらいたいからです。実際、日本の軍人を演じるときにも、さまざまな表現方法を試す努力をしています。初期の作品では私が演じた軍人は非常にステレオタイプで、そんな表現にうんざりし始めていました。2006年に『大刀』という作品に出演したとき、苦しくなったのです。このまま型通りに演じ続けていてはダメだ、変えてみるべきだと思いました。その後の作品では、ひたすら監督の要求通りに演じるのではなく、自分も意見を出し、演じる役にいかに人間らしさを感じさせることができるか、監督と話し合いながら進めるようになりました。

――今後もっとも演じたいと思っている役はありますか。

チャンスがあれば、阿倍仲麻呂を演じてみたいと思っています。彼は遣唐使として、中国で学んだものを日本に持ち帰るために学問を究め、帰国は果たせなかったものの、日中の文化交流の象徴的な存在です。その数奇な生涯を描いた小説があるので、それを元にした脚本をつくることができたら、ぜひ彼を演じてみたい。

日本が韓流ブームに沸いた頃、韓国の連続ドラマの回数の多さに、驚いた日本の視聴者も少なくない。中国のドラマも、日本のドラマとは回数も放映形態も異なる。1回約1時間で30~60回とかなりのボリュームがあり、一般に1日2回分、数週間かけて一気に放映される。その撮影現場も日本とは様子が異なる。

――中国の撮影現場と日本の撮影現場との違いは。

中国のドラマの撮影は非常にスピードが速く、スケジュールが厳しいです。普通、日本でワンクール11回の撮影なら、3カ月ほどかかります。しかし中国では30回前後のドラマの撮影にかける時間は、およそ2カ月半です。また、日本では第一回からある程度順を追って撮影しますが、中国ではシーンや役者のスケジュールにあわせて撮影します。

たとえば、最近撮影が終わったばかりのドラマ『先鋒』では、スター俳優が何人も、あくまで友情出演という形で登場します。彼らが撮影に参加できるのはごく限られた時間だけなので、とにかく彼らの時間にあわせるのが最優先で、登場人物はみな彼らと共演するシーンを集中的に撮影します。こんなふうに、3週間で百シーンほど撮影しました。このような強行軍の撮影は、日本ではありえません。中国のテレビドラマはその意味で役者に対する要求が非常に高く、役者たちはみな朝早くから夜中まで、一日中撮影を続けます。そんな中で、いつでも自分をベストの状態に調整しなくてはなりません。監督から声がかかったら、すぐに撮影に入ります。ほんとうに大変ですが、役者を鍛えてくれますね。

矢野は最近ではドラマだけでなく、トーク番組やバラエティー番組でもひっぱりだこである。湖南衛星テレビの人気のエンターテイメント番組『天天向上』では、司会者の一人としてレギュラー出演している。

――現在、中日合作のドラマも増え、中国をその活躍、発展の場として選ぶ日本の役者さんも多くなり、新しい中日両国の民間交流の一つの流れになりつつあります。

このような文化交流は非常に大切です。中国人も日本人も、相手の国に対する理解はまだまだ足りないものがあると思います。お互いに対する印象が古いイメージで固定されてしまっている。私は中国で生活するようになって、中国の情況を実感として理解していますが、それは中国に来たことのない日本人にはなかなか想像できない中国の姿です。私たちのように中国で生活したり仕事をしたりしている日本人を通じて、より多くの日本人に中国のことを理解してもらえたらと思います。また、私自身、中国の視聴者との交流を通じて、彼らの心の中の日本人に対する凝り固まったイメージを変えることができればと願っています。

文化には国境はありません。文化はほかの国の人にも受け入れやすいものではないでしょうか。私が出演している中国のドラマを日本人にも観てもらい、過去の歴史についても知ってもらいたいと思っています。中日の交流と友好のために役立つと信じています。中日の交流の友好のために、今後も努力を続けていきます。

矢野浩二以外にも、生活拠点を中国に移し、中国のテレビドラマに出演し、活躍する日本人俳優が増えている。中国の視聴者に広く受け入れられ、親しまれる彼らの活躍で、中国のドラマにおける日本人像の幅も広がっている。韓流ブームに続け、と日本で放映される中国のドラマも増えつつある。彼らの姿を、日本のテレビで頻繁に目にする日も遠くはないだろう。

人民中国インターネット版 2010年1月

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